管理者に求められる「情報感度」と「戦略発想」

 

仕事のできる上司、ある意味それは判断力に優れた人でもあります。前回のコラムでは、工事会社の管理者の仕事を例にして、できる人の頭の使い方、思考パターンについて検討してみました。

 彼らは、いつも考えて仕事をしています。頭を使って仕事することを怠りません。だから、瞬時の変化に対して頭の切り換えができる。状況に応じた的確な判断、柔軟な動きができるのです。

彼らは「ビジネスの状況は常に変わることがありうる。予定通り、こちらの期待通りに物事が進むことのほうが稀。いつも何かしら思いもよらない事情が発生する」といった発想で仕事を捉えています。

今現在、こちらの思い通りに状況が進んでいたとしても、ビジネスに確実なことなど何も無いそのことを彼らは良くわかっています。むしろ、そちらの方が当たり前だと思っています。  

 それ故、リスク管理、緊急事態への対応ということが、いつも念頭にあります。このような状況対応力に優れた管理者に共通する動き方、仕事の仕方についてもう少し深く掘り下げてみたいと思います。

 

1.情報感度が高い

情報は判断に欠かせないツールです。物事をジャッジする際に、情報の多い人と少ない人では、当然「判断の精度」に差が出てきます。何でもよく知っている。それは多くの判断材料を持っていることでもあります。だから、的確な状況判断、間違いの無い判断ができるのです。

それ故、仕事のできる人は周りの状況や周囲の動きに敏感です。変化への関心度が高い。状況は刻一刻と変わるものだと思っているからです。それは自ずと情報感度が高いことに表れてきます。

彼らは、ただ漠然と情報を耳にしたり、話に接するのではなく、その内容が自身のビジネスに大きな関わりがあることなのか。そして、重要なことであれば確実性の高いことなのかについてチェックします。

自分が大切だと思うことについては、より具体的な内容、事実関係を知ろうとします。自らの手で情報を取りに動きますし、その内容を自身で確かめようとします。だから、今の状況や現在の流れをシッカリと掴めるのです。ひいては、そのことが判断の核心になっていきます。

    

2.先を読むことを怠らない

情報感度の高い人に通じる、もうひとつのことは、情報を活せることです。集めた情報を基に、必ず先を読む習慣を持っている。いくら、多くの情報を持っていても、それを有効活用できなければ意味がありません。その内容を分析し、その意味を読み解くことが最も大切なことだと思います。

私の経験からすると“火の無い処に煙はたたない”という諺は、ビ  ジネスにもよく当てはまります。

“今の流れからすると、これまでとはちょっと違う方向に行きそう。こんな動きになる確率が高い”あるいは“もしかしたら、こんなことが起きるかもしれない”といった状況はシッカリと頭に入れておくべきです。この先の状況をイメージする。起こりうる事態を想像する。それが先を読むということに他なりません。

 ともすると、将来のリスクのことなどイチイチ考えていたら仕事にならない。悲観的発想や心配性にも程があるという方もいます。

      しかし、逆に楽観的に考え過ぎてもビジネスは望ましい方向には進み

    ません。そもそも、こちらの思い通りにビジネスが進むことの方が極め

    て珍しいことです。伸び悩む管理者は、どうもこの辺りの考え方やリスク

  管理の感覚が甘いように思います。

 

3.先を読んで、万が一の対策を用意する

 「取引先が、突然そんなことを言い出すなんて思いもよらなかった」とは実際の現場では、よく耳にする話です。しかし、それではビジネスの世界は通用しません。普段からの仕事の掘り下げ、詰めが甘いから、このような事態を招いてしまうのです。

 この先の流れを読み、その方向での方策を前もって練る。それこそが、情報を集め分析することの最も重要な意味だと思います。「今まで考えていたこととは違うことになりそう」ということは、今の時点での手法や方策が必ずしも有効ではないということです。これまでのやり方では通用しない。成功しない確率が高まったということです。

   少なくとも起きる可能性の高いこと。誰が考えてもその確率が高いこと

    については、それに備えた対策を、予め考えておくことが求められます。

「不測の事態」という言葉があります。しかし、ビジネスで本当に成功を納めたいと思うならば、本来、あってはならない言葉だと思います。

 

一方、情報感度の鈍い人は目先のことしか頭に無いのが実情です。当面の仕事にしか眼に入りません。だから、大切な情報が頭に入っていなかったり、そのことを知っていてもその意味がわかりません。

 先のことまで頭が回らないといった方が良いのかもしれません。その視野の狭さ。場当たり的な発想が、いざ問題が起きたときの判断の妥当性対処スピードの差になって現れてきます。 

  要は、ことが起きてから対処するのでは手遅れなのです。皆さんは、予行演習、模擬演習、リハーサルといった言葉をご存知でしょう。そして、何のために、それらを行うのか。その意味もお分かりだと思います。まさに、先を読んだ動きのことです。

  ビジネスを含め、世の中で起きそうな確率の高いこと(トラブル・ミス)は、往々にして実際に起きるものです。それに対処するために、先手を打つ。他者を一歩リードする。それが、まさに戦略の考え方に他なりません。

  

( 平成2771日 )         Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

 ▶ 関連項目:「戦略思考」と「判断力」

        成功への見通しを立てる「構想力」