リーダーの役割と自部署のテーマ設定
経営者、管理者、上司のような会社のリーダーに求められることはリ-ダーシップの発揮です。そのことに誰も疑いは持たないと思います。
では「リーダーに求められる役割とは何でしょうか」と、当のご本人に聞いてみると意外にハッキリとした答えが返ってこないものです。
無論「会社の発展成長」とか「自部署の業務革新」「職場のレベルアップ」といった形式的なことは、皆さん、異口同音に口にされます。そこで、更にもう一歩、踏み込んで「もう少し、その内容を具体的に教えてください」と突っ込むと急に言葉に詰まってハッキリしなくなってしまいます。
経営者、管理者、上司。いずれの立場においても、リーダーとしてやらなければならない仕事の役割・内容。上長に期待される具体的な仕事のやり方、進め方など、果たすべき仕事の役割、テーマがあるものです。
ところが、その本人ご自身の中では意外と明らかではありません。
昨今は、会社の優劣、力の有無など、何でも比較できるネット社会の真っ只中にあります。人並み、ソコソコのレベルでは通用する時代ではありません。いつの時代も、どのような商売であっても、ビジネスは競争原理で成り立っている仕組みです。団栗の背比べから抜け出さなければ生き残れないのが現実です。
だからこそ、少しでも会社が良い方向に進めるように、今の仕事のやり方を変えていかなければなりません。業績が伸びるように、現場の仕事のやり方・進め方を見直して、確かな仕事が出来るようにすることが求められます。今までは、当社では難しかった仕事。これまで、できなかった仕事をできるようにする。未経験の仕事や新しい分野の仕事にチャレンジしてできるようにする。ある意味、それが会社の発展・成長、職場のレベル・アップ、進歩の意味でしょう。
そう考えれば、リーダーの役割は「新しい仕事」にチャレンジして、それをできるようにすることです。
発展成長を目指す会社は、必ず毎年リーダーが、自部署のチャレンジ・テーマを掲げています。目標を設定すると言っても良いでしょう。何故ならば、そこから、会社の発展成長がスタートするからです。
兎角、人は自分にできること、わかることしかやろうとしません。自分にできないことはやりたくないものです。わからないことに進んでチャレンジしようとしません。まして、会社の将来や職場全体のことなど、考えたこともありません。また、目先のこと、仕事しか眼に入りません。先のことなど全く頭にないのです。
しかし、それでは、一向に会社の成長や職場のレベルアップなど期待できないでしょう。だからこそ、リーダーが進むべき方向性を示し、それを実現できるように会社や職場を変えていかなければなりません。
経営の立場なら「他社よりワンランク上の仕事をできるようにする(全社的な業務レベルのアップ)」といった会社のチャレンジテーマ。「ライバルとは一味違う独自性のある仕事ができるようにする(得意分野の確立)」といった目標設定が欠かせません。
営業部長のような現場リーダーであれば「提案力の強化・商談管理の徹底・提案受注率70%」といった、自部署(仕事)のレベルアップのテーマや業務改善の目標を掲げることが求められるでしょう。
一口に、チャレンジ・テーマを設定するといっても、現実には、そう簡単なことではありません。どこの会社でも数多くの問題点を抱えています。
今に至る様々な事情、諸問題があります。これらの現実を背景に「何から手を付けるべきなのか。どのテーマを選ぶか」は、どの会社でも、そう簡単なことではありません。
どのような難局においても、核心を突いた「テーマ設定」ができる。それこそが、優れたリーダーに求められる条件だと思います。
それには、まず最初に、自部署の「改めるべき処。もっとレベルアップすべき点」を見極めなければなりません。また、現時点で「ちょっと頑張ればできることか。かなり頑張らないと難しいことか」をよく理解すべきです。部下に無理難題を強いるようなテーマ設定では成功しないからです。
要するに、自部署の実状、実力を冷静に分析することが重要です。その上で「何から手を付けるべきなのか」テーマの内容を一点に絞込むべきです。
良くあることですが、人は目先のことだけを考えてしまいます。そうすると、直ぐにできること、確実に達成可能なことからチャレンジ・テーマを決めてしまいがちです。それでは、大きな成果は期待できないでしょう。
このように見てみると、自部署のテーマ設定は、リーダーとしての資質が
最も問われる仕事かもしれません。
(平成29年 8月 27日 改訂) Ⓒ 公認会計士 井出 事務所
(平成24年 9月 11日 )
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