「仕事の仕組み」の創り方 (その2) チェック・システム

 

 ホテル業界には「インスペクター」と呼ばれる仕事があります。室内清掃やベッドメイク等がキチンと出来ているか。ルーム・アテンダント(客室清掃スタッフ)が清掃を終えた後、客室の最終確認をし、雑な所があればそれを見つけ不具合な処を直して完璧にする仕事です。

 ベッドメイクを例にするなら、枕カバー、ベッドのトップシーツ、アンダーシーツに皴がないか。マットレスの下からシーツ類がはみ出ていないか。

担当者の仕事を細かな所まで目を光らせてチェックします。

それだけでなく、不備あればそれを綺麗に直すことも彼の仕事です。

また、会計士業界では、かなり以前から、監査の仕事を担当者任せにしない「審査制度」というシステムがあります。簡単に言うと「担当者がチャンと仕事をしたか。怠ってはならないチェックを確実に実施したか。業界内で認める一定レベル以上の仕事ができているか」を確かめる仕組みです。

監査法人では、審査会を通らないと監査報告書を出せないようになっています。このようにして監査意見は、どこの会計士が見ても公正なものであることをキープできるようにしています。

 

ホテルのインスペクターにしても、監査法人の審査制度にしても、このような「仕事をチェックする仕組み」がある理由は、いずれも組織()として仕事の完成度をキープすることにあります。「チェック・システム」は、内容的にもレベル的にも、より完璧な仕事・間違いのない仕事を目指す仕組みです。

 あまり気付かないことかもしれませんが、このような仕事のチェック・システムはあらゆる業界にあります。

 技術力のあるメーカーの工場では、品質保証・品質管理・製品検査といった部署があり、そこでのチェックを必ず受けてから出荷される仕組みになっています。チェーン展開している会社の「スーパーバイザー」「エリアマネジャー」と呼ばれる人たちも、各店舗の業務運営の問題点を発見し、改善する職務を負っています。

要は、担当者のスキルやマンパワーに頼らず、あくまでも会社として、その仕事の完成度(内容・レベル)をコントロールすることが、その目的です。

仕事を担当者任せにしない、組織的に仕事をするための仕組みです。

 その一方で、何も他人がチェックせずとも自分でチェックすれば済むことと考える人もいるでしょう。そんなシステムは、二度手間になるだけで時間も手間もお金もかかる。無駄が多いと思うかもしれません。

 しかし、多くの業界でこのようなシステムが定着しているのは、担当者自身のセルフチェックに頼ることは難しいという結論に達したからだと思います。そのような考え方は、一部のプロ意識の高い社員や仕事のできる熟練工のような少数派にしか通用しないからです。

 

拙稿“「仕事の仕組み」の創り方“で、工場の現場仕事を例にして「作業指示書」「作業手順書」のような業務管理シートが、組織的に仕事をするための「ツール(仕組みのベース)」になることをお伝えしました。

人海戦術によらず、社(職場)としての仕事のやり方の基本を固め、業務レベルを統一するための手段(ツール)るのが、これらの文書です。

これらの管理シートにしたがって、作業を進めることで、職場の全員が「やるべき仕事の内容、方法」について共通認識を持ち、誰もが一定レベルの仕事をできるようになります。

 しかし、このような作業管理シートさえあれば、皆が皆、確実に同一レベルの仕事が出来るようになるかと言うと、必ずしもそうとは言い切れません。「作業指示書」の内容をウッカリ見落とした。守らなければならない注意事項があるにもかかわらず、面倒臭くなって手を抜いた。等々さまざまな問題が起きます。全員が指示書のとおりに確実に作業ができるとは限りません。

 だからこそ、会社として、間違いのないより確実な仕事をするための「チェックシステム」が必要になるのです。

 このようなチェックシ・ステムがあれば、担当者の意識も変わってきます。他人は誰しも「自分のやったことを他の誰かに後でチェックされる」と思うと、より慎重に仕事をするようになります。

一人でやると速く仕事を済ませたいために、一仕事終わったらハイ終わりという感じでやりっぱなしにしてしまいがちです。ところが、後で他の人にチェックされるとわかっていれば、間違いや不具合がないか、もう一度自身でも良く確かめるようになります。その意識が担当者のスキルアップにつながります。

結果として、担当者本人とチェックする人のWチェックになるので、社として、間違いのない仕事・完成度の高い仕事ができるようになります。それが組織的な仕事のやり方といえます。 

 

 組織力のある会社は、個人の力に依存しない「仕事の仕組み」がシッカリしています。より確実な仕事をするために、上司と部下・現場とチェック担当といった、お互いに確かめる「仕事の仕組み」があります。

 そのことを念頭において、もう一度、自社・自部署の「仕事の内容の良し悪し・レベルの高低・そのやり方の是非」について検討していただければ幸いです。

 

( 平成27828日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所