「仕事の仕組み」の創り方

確かな技術力を持ったメーカーの工場には「作業指示書」「作業手順書」「作業チェックリスト」といった業務管理のシート(書類)が各現場 (工程)に必ずあります。定められた仕事のやり方・進め方・その際の注意事項を、職場の決まりごととして纏めたものです。誰が作業をしても、同じ内容、同じレベルの仕事が出来るようにする仕事のツール」です。技術や仕事のノウハウを共有するための仕組み(ツール)と言っても良いでしょう。

現場の実行力(技術力)をキープするために欠かせない「仕事の仕組みの一部(ツール)」です。

仕事の仕組みといっても、何か形があるモノでも、目に見えることでもありません。「こういう手順で、こういうことに注意して仕事をしなければいけない」という共通理解の元で全メンバーが仕事をすることです。

そのためには、やるべき仕事の内容、方法について、皆が共通認識を持つためのツールが必要です。

「指示書」や「チェックリスト」のようなシートは、会社(職場)として、やるべき仕事のやり方、技術を統一する役割を果たします。

上司の背中を見て仕事を覚える。先輩の技を見て盗む。そんな時代はとうに過ぎ去りました。このような形あるモノ、目に見えるモノがないと、何を見習うべきなのか、何処に注意して仕事をして良いのかわからないのが、今の人たちです。上長からの口頭の指示や注意だけで、社としての「仕事のやり方」を全員に徹底することは難しいでしょう。

組織的に動ける会社は、このような「仕事の仕組み(システム)」を通して、社員が確かな仕事を出来るようにトレーニングしていきます。

つまり、これらの作業管理のツールは、組織力のベースになる極めて重要な書類なのです。担当者の個人的な能力に頼らず、彼らの力を引き出す「会社の力」でもあります。

 

一方、工員さんが30人を超えるような中堅会社になっても、家業的な仕事のやり方をしている工場(会社)も多くあります。社員個人の能力やスキルに頼って仕事をしている処です。

このような会社は、担当者に仕事を任せっぱなしにしているので、一人ひとり仕事のやり方が細かな処で違います。社員の能力のバラツキが、仕事の内容やレベルに反映してしまいます。各々のスキルに一長一短があり、ちょっとしたミスや行き違いが無くなりません。また、各人の判断で勝手に動くので、細かなところまで上長の注意が行き届きません。日々の指示や注意も口先だけのものになってしまいがちです。

その結果、不良や不具合といったロスミスの発生率や製品の品質が、安定的にコントロールできません。

こういう状況になってしまうのは、会社として「モノ造りのノウハウ」が固まっていない。技術を共有する仕組みがないからです。社員一人ひとりが、確かな仕事をできるようにする「仕事の仕組み」がないとも言えるでしょう。

 

 あらゆる仕事に、その仕事が上手くできるノウハウやスキル()があると思います。成功するには成功するための条件があります。「必ずやらなければならないこと。守らなければいけないこと。絶対に、手を抜いてはいけないこと」があり、逆に「絶対にやってはいけないこと」もあるでしょう。そのノウハウを忠実に守って完璧に実行すると、その仕事が上手くできる。多少経験が浅くともその道のプロのような仕事ができるようになる。上手く行かない、失敗するのは、成功の条件である、そのノウハウがわからないからです。

仕事を担当者任せにしている限り、彼らのスキル()やそのノウハウは、いつまで経っても個々の未完成なレベルのままです。仕事の基礎になる技術やノウハウがバラバラで固まっていなければ、よりレベルの高い仕事をこなすことも難しいし、新たなスキルも導入できないでしょう。

だから、会社(職場)全体の仕事のレベルが上がらないのです。場当たり的な仕事を繰り返しているだけでは会社は成長しません。

 

 これらの話は、何もメーカーに限ったことではありません。あらゆる業種の会社の全ての仕事に当てはまることです。社内の各部署でノウハウを共有する仕組みを作る。それが、会社を伸ばすためのセオリーのひとつだと思います。例え面倒なことであっても、長い眼で見ると、大切なことではないでしょうか。

「仕事の仕組み」を創るというと難しいことのように聞こえます。しかし、ちょっとした仕事の注意事項を整理して言葉として纏める。その内容を見えるようにする。チェックリストにする。あるいはスローガンとして壁に張り出す。手段は何でも構いません。朝礼や会議の場でことあるごとに、その内容を徹底することでも良いでしょう。そうして皆の頭にこれらの内容をシッカリ叩き込むことが仕組み創りのたたき台になります。そうやって、仕事のノウハウを共有し、皆が実行できる共通スキルにする。それが、ひいては仕事への共通認識を高め、職場のまとまりにつながっていきます。組織力をアップするには、こういう流れで進めることが無難だと思います。    

 

( 平成27820日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

 ▶関連項目:OJTの限界と職場の業務改善

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       社員をトレーニングする仕組みが組織力の土台になる