報告書を鵜呑みにしない

 

 コンサルの現場では、報告書はとても重要な役割を果たすツール(手段)です。そこに書かれている内容を読んでいると、何となくその現場の情景が浮かんできます。具体的な記述で、細かな事実関係まで書かれていると書き手の人が高い意識を持って仕事をしていることが伝わってきます。

 

ある食品メーカーの話ですが、工場長の報告書に「書き方が幼稚」と書き込んだ社長さんがいました。いつも同じことを、注意しているのにその点が直らないことに苛立ちを隠せなかったのでしょうか。

  しかしながら、このような抽象的で欠点指摘型のコメントは意味がありません。

  

どうして、このトップがこのようなコメントをしたのか。当時の生産現場の状況を振り返ってみましょう。この会社はISOのライセンスを取っていたので、その都度不良品(取引先からクレームが出た)の発生に関わる「事故報告書」が会社に提出されていました。しかし、何故、不良が発生したのか。その原因について十分な検討がなされていません。 

 

報告書には、不良発生の原因として「材料の計量ミスによる不良」や「機械の洗浄不備による不良」といった文言が書かれているだけで、同じようなミスを毎度繰り返していたのです。また、何故、このような事故原因を引き起こしたのかという理由については、担当者の「不注意・不手際・連絡や指示の行き違い」といった記述があるだけです。

 

小さな会社に、ありがちなことですが、この会社も、全ての仕事が「現場任せ、担当者任せ」というやり方になっていました。各人が自分のやり方、スタイル、マイペースで担当業務を進める工場だったのです。

  それ故、ベテランを含め、仕事の確実性やスピード感といった技能にメンバー間で大きな差がありました。 

 

そこで、社長が注目したひとつが毎日現場でやっている始礼のやり方です。総務部長を工場に派遣し、実際にそのやり方や内容を見てくるように指示しました。以下、彼の報告です。

  

1. 毎週、週明けにメンバー各自に一週間の作業予定表(担当機械ごとの生産計画)

 を手渡しており、それをベースに、当日の作業内容をひとりひとり確認している。

  しかし、その後は「チャンとやって下さい」とか「今日も一日、注意して仕事をし

 てください」といった抽象的な話を上から一方的にするだけでした。

 

 2. 不良の発生しやすい製品への注意の喚起、当日の製品作りに関わる細かな

  注意点を繰り返し伝える、よく確かめるといったことは、始礼の時間が長くなる

  との理由で特段していません。

 

また、ミスが多いメンバーに、別途、注意を促すこともやっていません。

 3 .当日の作業に関わる細かな注意事項を書き込んだ(製品別の)作業指示書を

  メンバーに渡していない。

   

 ここで、皆さんにお伝えしたいことは「事故報告書の書き方」ではありません。報告書は、書き手がどのように現状を認識しているか。その捉え方によって、その内容や書き方が異なります。必ずしも、実際の事実関係を正しく伝えるモノではありません。その点を注意して読まないと、物事は良い方向に進みません。

   特に、同じような問題が解決しないような場合は、報告者の内容を鵜呑みにしない方が良いと思います。

 

 この社長が賢明だったことは「百聞は一見に如かず」を実行したことでした。そこで分かったことは、不良発生の原因についての捉え方の違いです。現場を見に行った総務部長は「指示内容・注意の内容がアヤフヤ、ハッキリしない。それらの内容の徹底不足、不徹底」という見方をしました。一方、工場長の認識は「担当者の不注意、注意不足」です。

 

 工場長としては「自分に出来ることは全てやっている」と言う思いがあります。そこに、今の自分やり方、指導の仕方なり管理の仕方に、少なからず問題(改善すべき余地)があるとは思っていません。

  不良の多くは現場のメンバーの力不足の問題と頭から決めつけています。一度言えば、言ったことは全て伝わる、下は実行すると言う思い込みがあります。

 

第三的な見方からすると、工場長の注意や指示は言い放しになっていました。要は「確認」とか「ダブルチェック」という基本的な仕事のやり方がメンバー全員に徹底されずスルーされていたのです。

 この工場長のように不良品の発生原因の捉え方そのものに問題がある限り、望ましい改善策は見つからないでしょう。

  

( 平成3121日)          © 公認会計士 井出 事務所

 

 

► 関連項目 :仕事を担当者任せにしている限り会社は成長しない

         :「当たり前のことが出来る会社になる」

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