成功への見通しを立てる「構想力」( 自部署のテーマ設定 9 )
新規事業の開発や自部署の業務戦略、業務改革のように、企業経営には手探りで物事を進めていかなければならない仕事があります。その際、未知の分野、未経験の仕事が多いほどリーダーの果たす役割は大きいと思います。営業戦略や購買戦略といった自部署の業務戦略や業務改革のような自部署の課題(チャレンジテーマ)を達成する。そのためには、そこに何かしらの勝算なり成功の見通しが必要だと思います。
ところが、最終的な目標を達成するためには、必ずといって良いほど“乗り越えなければならないハードル”“クリアーしなければならないテーマ”がいくつかあります。実際、ほとんどの会社が、それらを克服できないために失敗するような難題ばかりです。それらのテーマは、見方を変えれば「成功と失敗の分岐点」となる課題(テーマ)といっても良いでしょう。
戦略推進や改革のリーダーに求められる役割は「どのようにすれば、戦略や改革を成功に導けるのか。何をしていけば、その実行力が身に付くのか」その具体的なやり方、方法を考え「こういう手順でやっていけば何とかなる」という成功への道筋を示すことです。
わかりやすく示すと「6ヶ月後を目処に実行できるようにすること。今年中にやらなければならないこと」といったように、期日を軸にして「やるべき仕事。達成しなければならないテーマ」を明らかにすることが成功へのガイドラインを描くことになります。それが、見通しを立てると言うことです。
醤油やみりん等のプラスチック容器を製造している三島容器(仮名)は、新分野である医薬業界や化粧品業界に進出する戦略を成功させるために「提案営業ができる営業部」という課題(改革テーマ)を設定しました。
彼らは、改革を実際の仕事に落とし込むために、まず以下のようなサブテーマを検討しました。
1.営業マンのトレーニングの実行
①提案内容の企画方法のトレーニング
(*他社の提案書の入手、調査、研究
②提案書の書き方のトレーニング
③プレゼンのスキルアップのトレーニング
2.半期毎の営業計画の作成
①営業先の優先順位の明確化(既存・新規共に重点顧客の絞込み)
②初期訪問から受注までの提案営業のリードタイムの設定
③半期の受注活動のスケジュール化
④上記③の受注活動のスケジュールをベースにした訪問活動の
スケジュール化
一口に「提案営業の実行」と言っても、その仕事の内容を具体的に見て見ると、実に細かな仕事が沢山積み重なっていることに気付きます。この会社のように、最終課題を達成するために求められる一連の仕事を明らかにして、期日を決めてそれらを一つ一つ実行していかないと、実際の仕事としては動かないと思います。
ハッキリとした計画やスケジュールを明らかにできなくても、少なくとも半年後、一年後には「こういうことが出来ていなければならない」というようなザックリとした見通しを示すことは欠かせません。
成り行き任せ、出た処勝負では、改革や戦略の成功は望めないでしょう。
成功への見通しを立てる力。それを構想力と言います。改革のリーダーや戦略推進のリーダーはその構想力を磨かなければなりません。成功への見通しが甘いと、改革は思うように進まないし、戦略を成功に導くのが難しいからです。
構想力を身につけるには、普段から「先を読む」「先を見て動く」「メリハリをつけて動く」ということを念頭において仕事に取り組んで欲しいと思います。
実際には、上記のテーマの実行途中で新たな課題が見つかった。当社のような受注業では、提案書の作成以前に、実際に手にとって見れる「サンプル品(試作品)」を造れるような組織体制が整っていないと「提案営業」そのものが成り立たないという現実に直面した。
( 平成27年7月1日 改訂 ) ©公認会計士 井出事務所
▶ 関連項目: 部門改革の「テーマ設定」と成功事例(営業部門)