改革テーマを絞り込む (自部署のテーマ設定4)
営業力、提案力、企画力、マーケティングのように、普段我々が何気なく使っている言葉があります。ところが、その意味なり内容を問うてみると、人によって答えがマチマチだったりします。必ずしも明らかな答えが返ってこないことも多いでしょう。それは、その言葉の意味や内容がはっきりしているようではっきりしていないからです。誰もが、その言葉の意味を明確にしないで、アヤフヤのまま使っているからです。
ですから、問題解決のテーマを「営業力不足」のように問題点そのものを大きなくくりの言葉でとらえてしまうと改革の話し合いは進みません。
それだと、解決策は単に「営業力強化」ということになってしまうからです。
このような議論の仕方では、具体的な解決策の内容にはたどり着けません。
改革を成功へ導く分岐点は「これまでの仕事のやり方、方法を変える」ことです。ですから、改革のテーマを、もう少し細かく掘り下げないと「仕事のやり方をどのように変えていくか」という議論の焦点が定まりません。
話し合いのテーマが漠然としていると議論の内容が深まらないからです。
自部署の「改革テーマ」を決めるには、いくつかのサブテーマを設けることが望ましいと思います。その中から、個々のサブテーマの重要性を検討し「まず、何を解決すべきか」解決の優先順位を明らかにし「改革の本丸となる最重要テーマ」を絞り込まなければなりません。いわゆる「改革のキーワード」を見つけることが欠かせません。
それには、当社の足りない点。他社に遅れをとっていること。通用しないやり方など、ひとつひとつ実例を挙げて今の問題点の実情を洗い出すことが必要です。これらに注目すれば、何かしら改善すべきポイントがあることに気付きます。見落としていた注意事項。今まで全く意識していなかったこと。不用意のままやっていたことなどが、いくか浮かび上がってきます。
そもそも、仕事が上手く進まない。仕事が捗らない。レベルが低い。ミスやトラブルが起きるのは現状の仕事のやり方に何かしらの問題があるからだと思います。すなわち、改革とは「現状の仕事のやり方や方法を、ビジネスで勝てるやり方に変えること」に他なりません。
どのような仕事にもコツとか勘所があります。「こういう点に注意すれば上手く行く。こういうことに気をつければスムースに仕事が運ぶ。こういうことを意識すればミスをしない」というような、その仕事の注意事項、チェックポイントがあります。それこそが、仕事の実行力のベースとなるノウハウやスキルです。
改革を成功させるには、上手くいかない仕事。問題のある仕事のやり方や方法にスポットを当てて議論を交わすことがポイントです。「見直すべき仕事の内容、改めるべき仕事のやり方」そこに的を絞ることが重要です。
逆の見方をすれば、自部署の改革、職場の問題解決が上手くいかない原因は、変えるべき仕事の内容が細かな処まで落とし込まれていないことです。「こういう点のやり方をこういう風に変えていく」という、その仕事の具体的なやり方や方法がハッキリしていない。だから、現場の動き方が変らないのです。
営業力強化を例にとると、商談の流れにしたがって「改革のサブテーマ」を明らかにすることも一つの方法です。視点を変えれば、よくある商談が途切れてしまう局面や話を次の段階に進められない状況など、営業改革の本丸となる商談の勝負処と言っても良いでしょう。
そうすると ① 継続訪問が弱い ② 効率的な動き方(訪問活動)ができない ③ 提案のチャンスの掴み方を知らない ④ 相手を話(提案)に乗せるのが下手 ⑤ 提案書の内容がお粗末 ⑥ 価格交渉が苦手
このように、改めるべき具体的な営業ノウハウ、レベルアップすべき商談推進スキルが見えてきます。①~⑥そのいずれかのテーマ、その狙いによって採るべき方策は各々違ってきます。
勿論、その会社の事情によって「改革のテーマ」は異なります。自社の実情にしたがって、改革の最重要テーマを洗い出すべきです。
④のテーマであるならば、最終的に「相手の共感を引き出すプレゼンのコツ(話し方)」のようなキーワードにたどり着くまで議論を深めることが肝心です。
「改革のキーワード」を見つけることは、職場の問題解決にとって、とても大切なことです。そこにスポットを当てれば、自ずとその局面を打開する具体的な方策、やり方、方法について話し合う方向に議論の内容が向くからです。改革の議論の内容を深める。実のある話し合いにするには「何にこだわるのか。テーマの狙い」をできるだけ細かくその内容を絞り込むことが欠かせません。それが具体的な解決策、ノウハウを導き出すポイントになるからです。
( 平成25年 8月16日 ) ©公認会計士 井出事務所
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