職場の「仕事の仕組み」について考える

 

ビジネスは競争原理で成り立っています。力のある会社は成長し、力の無い会社は消えていく仕組みになっています。その力とは、シンプルに言えば「確かな仕事が出来る。仕事にシビア」ということです。

しかしながら、それ以前に、多くの中小企業では、お客様から見て「いまどき当たり前だろう」といわれる基本レベルの仕事さえ満足にできない処も少なくありません。お客様から信頼される仕事が出来る会社にならなければ存在することさえ難しいのがビジネスの現実です。

 社員を寄せ集めただけの会社では、世の中の流れ、スピードに追いつけない時代になりました。生き残っていくためには、会社として経営が陣頭指揮をとって、現場の実行力を高める方策を打ち出していくべきです。

 日々の仕事のやり方、進め方を、現場任せ、担当者任せにしていては、いつまでたっても各職場のレベル実行力は上がりません。まさに、経営の力が問われているのです。

 

そこで、今一度、見直していただきたいことがあります。それは、日々の仕事を通して、社員全員が「一定レベルの確かな仕事ができる」ようにする仕組み(制度・システム)を作ることです

「仕事の仕組み」というと、何か難しいことのように聞こえます。ところが、どこの会社でもやっている“朝礼”“週次あるいは月次の定例会議”“日報、週報のような報告書の提出”“週間、月間のスケジュール表(予定表)によるスケジュール管理”があります。

意識していないと気付かないことも知れませんが、れらは、皆、日常的な業務をコントロールする「仕事の仕組み」として動いている仕事です。

 

 誰彼が言わずとも、職場の決まり事として必ずやらなければならない仕事。メンバーの共通認識として定期的にやる業務。つまり、これらは全部職場の「仕組み」として動いている仕事なのです。

 ところが、同じ仕組みがあって、日々同じことをやっていても、実際には会社によって大きな違いがあります。仕事上の注意事項を徹底できる会社とできない会社があります。報告書など提出物の期日を全員が確実に守れる職場もあれば、それがグダグダになっている部署もあるでしょう。また、報告書の内容が事実関係のハッキリしない要領を得ないものが多いようでは困ったことです。スケジュール表を作っても、予定通りに仕事を進められなければ意味がありません。また、先を読んで、臨機応変に時間のやり繰り、仕事のやり繰りができなければ、適切なスケジュール管理ができているとは言えないでしょう。「仏造って魂入れず」の諺通り、形ばかりの「仕事の仕組み」になっている会社が多いように思えてなりません。

 その証拠に、何か物事を徹底するとか、職場の決まり事を守るといった、会社として当たり前のことができません。「またか」と思うようなミスをする。「仕方ないでは済まない」不注意を繰り返す。年中、目先のことに追われてドタバタしている。状況に応じてスムースに対処できない。いつも、仕事が後手後手に回る。

いつまでたっても、このようなことが起きるのは、打ち合わせ、会議、報告書スケジュール管理といった、「仕事の仕組み」が仕組みとして上手く動いていないからです。

“職場のまとまりが悪い。連絡、報告といったコミュニケーションが悪い。担当によって仕事のレベルがバラつく。責任感が足りない”といった状況も同じことが原因で起きると考えるべきでしょう。

 職場として「組織的な動き」ができているとは、とても言える状況ではありません。

 

 よく考えてみると、これらの日常の業務管理の基本となる「仕事の仕組み」を動かすにも、いくつかのチェックポイントがあります。

「何のために、朝礼や会議をするのか。どうして報告書を提出しなければならないのか。何故、スケジュール表を作るのか」現場の管理者や上司がその意味を十分に理解していなければ、その効果に大きな違いが出ても仕方がありません

 ひとつの例として、朝礼や会議の場で、上司の指示や注意が徹底できないことがあると思います。上からすると口が酸っぱくなるまで何度も言っている。でも相変わらず、細かなことが隅々まで行き届かない。

 下からすると「覚えてはいるけど。聴いた気がする」といったレベルの意識しか頭に残っていません。まさに「馬の耳に念仏」状態です。このような状況では、いつまでたっても不注意や不手際は無くなりません。

言葉で言ったことは、その場ですぐに消えてしまいます。だから、ちょっと時間が経つと聞いた方は忘れてしまうのです。言葉だけでは頭に残りにくい。だから、どうしても上の言葉が言いっぱなしになってしまうのです。

 こういう時は、コミュニケーションの方法を変えるべきです。言葉に加えて文書にして伝えることが大切です。本気で、上の指示や注意を徹底しようと思うなら、上司が「文書にして手渡す。必ず、メモをとらせる。会議の議事録を採る」といった処までやるべきです。要は、言葉だけで伝える方法に、文書で伝えることを加えるのです。そうすれば、後で確かめることが出来るし、読み返すこともできるからです。

 これらは、所謂「見える化」のひとつです。そこまでシビアにやらないと、物事は前には進みません。会社によっては、さらに、その都度それを「読ませる。復唱させる」処もあります。

 内容的には「何だ。当たり前のことばかりで、目新しいことは何も無い」と思う方も多くいるでしょう。しかし、その「できて当たり前のこと」が出来ないから、毎年「一年前と何も変わっていない。進歩していない」と思うのです。実際、少しも頭を使うこともなく「チャンと言っているけど出来ない」と言った言い訳を、先に口にする上長が多すぎます。あるいは「そんな細かなことまで、やっても意味が無い。効果は少ない」と出来ない理由、やらない理由を先に出す人もいます。

 それこそ、本末転倒。その言葉が上司としての役割放棄になっていることに気付けません。

もし、貴方の会社がこういう状況であるならば、それは彼ら自身の能力の問題ではなく“会社の問題、経営の問題”と考えた方が良いでしょう。

冒頭に、経営の力が問われると書いたのはそういうことです。

現場の状況、仕事の仕組みが上手く動いているのか。その事実を確かめ、彼らと共に考えて、望ましい方向に変えていくべきです。そうしなければ、会社に明るい未来はやってこないでしょう。

 

( 平成2789日 )        Ⓒ 公認会計士 井出 事務所

 

► 関連項目: 「仕事の仕組み」と「プロ意識」

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