課題(チャレンジテーマ)と「ヴィジョン」 (自部署のテーマ設定 5)
「課題」と似たような意味で「ヴィジョン」という言葉があります。
自部署の課題、テーマ設定をする時に注意することは「ヴィジョン」と「課題」の意味合いを勘違いしないことが大切です。
実際、自部署のヴィジョンを創るような研修やコンサルが多くあります。しかしながら、その内容が「上手く実務に活かされているか。現場の仕事につながっているか、役立っているか」というと、余り良い話は聞こえてきません。そこで「ヴィジョン」と「課題」の意味や内容を取り違えないよう、その違いについて考えてみたいと思います。
「課題」は、目標とする自部署のチャレンジテーマだと思います。
「~開発、~改革、~戦略」の成功という“達成しなければならない具体的なテーマ”です。客観的な結果を求められる仕事の成果に他なりません。
一方「ヴィジョン」というと“こんなことができるようになったら良いな”というイメージ的なあるべき姿、理想像をどうしても描きがちです。自部署が進むべき方向性を示すシンボル的な意味合いが強く、それが「~の成功」といった現実的に目指すべき終着点となるかというと難しい感じがします。
確かに「ヴィジョン」という切り口でのテーマ設定の仕方は、発想と言う点からは描きやすい手法です。しかし「ヴィジョン」という言葉で職場のテーマ設定を考えると、自部署の“理想の仕事の仕方”や"あるべき職場像”を示すような抽象的なテーマになりがちです。
メンバーからすると、イメージ的には何となくわかるけれども、ハードルが高過ぎて、現実とはかけ離れた理想のテーマになってしまいます。
彼らの本音として、実際に達成しなければならないテーマという感覚にはなりにくい。そんなことが出来るなら苦労しないという想いが先に来て、現場の目的意識とはフィットしにくいものです。だから、どうしてもテーマの文言だけが宙に浮いたような感じを受けます。
それ故「ヴィジョン」をいう言葉で考えた自部署の課題やテーマは、日々の仕事の忙しさに紛れて、いつの間にかフェイド・アウトしてしまいます。だから、遠い存在のまま、具体的な実行策にもたどり着けず、立ち消えになってしまうのではないでしょうか。
部署のテーマは、目標としてこれから取り組むべき仕事の内容であるべきです。「新規開拓ができるようになった。新規の受注率が上がった」という成し遂げるべき仕事の内容です。達成すべき課題として、実際に求められる仕事のレベル、やり方に他なりません。従って、誰もがリアルに分かるような具体的な仕事のテーマにならないと、実際の動きにはなり難いと思います。頑張れば手の届く目標、達成できそうなテーマだからこそ、現場のメンバーもトライしようと思うのです。
現場のメンバーを巻き込み、彼らの目的意識を喚起するためには「そのやり方なら上手く行くかもしれない」という具体的な方法、やり方を、まず明らかにすべきです。
例えば、営業力の弱い製造業の会社の営業が“提案営業ができる体制創り"“新規開拓ができる体制創り”という「営業課題(チャレンジテーマ)」を掲げたとしましょう。
しかしながら、よく考えてみると、それは営業だけの問題ではありません。製造部門や外注先を巻き込んだ、本来であるならば「会社全体の課題」あるいは「経営戦略」として取り組むべきテーマかもしれません。
営業部門だけが頑張っても解決できない大きなテーマであり、難しい問題だと思います。この営業課題を成功に導くには「試作品(サンプル)創り」といった関係部門との交渉事や調整事といった難題が立ちはだかります。
当然、そこには彼らの大きな反対や抵抗が予想されます。そのような難局を乗り切るには、予め、難問となるハードルを想定し、それを乗り切るための
手段を練っておくことが欠かせません。それこそが成功への糸口になるからです。
このように「課題(チャレンジテーマ)」そのものが大きすぎて、その達成方法がハッキリしない場合は「どのような手順で実行していくのか」その道筋を示すことから、成功へのきっかけを摑んで行くこともひとつの方法です。 実行計画の内容から「課題」の中のさらに細かなテーマ、内容をひとつひとつ詰めていく手法もあります。いずれにしても成功にたどり着くまで辛抱強く取り組むことが求められます。
要するに「成功に繋がる課題(チャレンジテーマ)」と「ヴィジョンで終わってしまうテーマ」の違いは「成功へのガイドラインが有るか無いか」そして「その内容の具体性の有無」だと思います。
その会社の実情によって、その部署の現状によって、目指すべきテーマの意味合いも内容も違ってきます。それぞれの会社に、それぞれの事情があり、百社百様の目指すべき課題、目標があって良いのです。
しかしながら、ビジネスである以上、部署のテーマ設定は、目標として達成すべきテーマであり、実際に実行可能なテーマでなければ意味がありません。将来に求められる結果、仕事の成果、成功であるべきです。
究極の理想は理想として、現実の世界で、成し遂げるべき目標としてのテーマ設定が大切だと思います。
( 平成27年4月3日 )加筆修正 ©公認会計士 井出事務所
► 関連項目: 中小企業に求められる営業体制