部門改革の「テーマ設定」と成功事例(営業部門)

 

 部署のテーマ設定が、未知の仕事にチャレンジする内容だった場合、実際に動いてみないとわからないことが山ほど出てきます。見通し通りに動かないこと、思い通りにならない現実に直面すると思います。

そのような状況を、どのように修正して当初描いた見通しに乗せていくのか。それとも見通しそのものを修正して動いていくのか。その判断をし、実行するのがリーダーの役割、上司の仕事だと思います。

テーマ達成の鍵になるのは「こういうことが実行できる」という最終目標の具体的な達成イメージと、そこに至る「しっかりとした見通し」です。

それがはっきりしていないと、常に出たところ勝負、成り行き任せの連続になってしまいます。そうなると見通しの甘さから来る準備不足や力不足が露呈してきます。その結果、当初のテーマが、どんどん遠くなって、いつの間にか絵に描いた餅になってしまうのです。

 

 醤油やみりん等のプラスチック容器を製造している三島容器(仮名)の「提案営業ができる営業部」という課題(改革テーマ)の実現に向けての動きを追ってみましょう。このテーマ設定を設定した背景には、この会社が、新分野である医薬業界や化粧品業界に進出する戦略を成功させるために必要な改革だったからでした。

 彼らは、改革を実行するために、まず最初に3ヶ月の予定で「営業マンのトレーニング・カリキュラムの作成と実行」というサブテーマに取り組みました。ところが実際に動いてみると、何一つわからないことばかりでした。例えば「提案内容の企画法のトレーニング」ひとつをとっても他社がどのような提案をし、それをどのように提案書にまとめているのか、その情報さえ無いのが実情でした。当社が、如何に他社の動きに無関心であったか、思い知らされました。そのような状況でしたから、提案内容そのものの事例。提案書の書き方(目次・ストーリー)の見本。提案、商談の進め方等々、わからないことの連続でした。

 そうこうして進めているうちに、まず提案のベースになるサンプル品のカタログを作成しなければならなことに気付きました。それは、当初は気付かなかった最初の成功の分岐になった課題(サブテーマ)でした。

医薬品や化粧品業界の商品は容量が大体決まっているため、容量ごとにカタログを作りました。結局、そのカタログが出来上がるまで、10ヶ月以上の時間が過ぎていました。

 

 形ながらの提案営業は、そのサンプル品のカタログを使ってスタートしました。しかし、実際に動き始めてみると、訪問先の担当者から現物を見ないとイメージが湧かないと指摘されました。全く想定外の話ではありませんでしたが、その時点では余り重要なこととは考えなかったのです。

その後もカタログを使った営業をしていましたが、半年くらいたって、漸く当社のような受注型の提案営業では初回訪問の時点で、提案の見本となるサンプル品や試作品が無いと、そもそも商談自体にならないことに初めて気付きました。

それまでは、カタログに載っているサンプル見本を提案することが提案営業だと思い込んでいました。ところが、そのサンプルの現品をたたき台にして、容器の「デザイン提案」をすることが提案営業の実態であることを遅ればせながら理解したのです。要は、提案の本質そのものを履き違えていたことに気付くのに、何と一年半以上の時間を要したのです。

他社が創らないようなサンプル見本を創り「現品を見ていただいて顧客の要望を引き出す」それが提案営業のスタートになります。

「サンプル品、試作品の制作」こそ、提案営業の核になる事実でした。

それを学んだことが提案営業成功の大きな分岐点になりました。のちのち、それが二番目の課題(サブテーマ)であったことがわかりました。

 

成功の大きな要因のひとつは、提案営業のコツ(ノウハウ)を掴んだと思えたことです。サンプル品を実際に手にしていただくことで、顧客の反応がリアルにわかるようになりました。提案の手応えを感じられるようになった時から、これまでの皆の「頑張ってみよう」のレベルだった目的意識が「何とかして数字を取ろう」という達成意欲に変っていきました。

 提案のコツが見えてくると、これまでの主たる取引先だった食品業界内にも多くのビジネスチャンスがあることを知りました。核家族化の増加によって調味料等の容器が少量化している傾向があり、既存顧客でも提案の余地が多く残されていることがわかったからです。製品の差別化の手法に頭を悩ませていた食品メーカーとの売り場でちょっと目立つデザインの容器という当社の提案が噛み合いました。

実際、提案営業成功の第一号は既存の取引先からでした。当社の営業体制の変化に気付いてくれた資材部長の一声で、何とか最初の受注案件を頂戴したのです。 

 

営業部改革に取り組んで、実際に動いてみると「言うは易し、行うは難し」の例えの通り、頭の中ではわかっているつもりでも、現実には実行できないことばかりでした。

最も、見通し通り端からスンナリいくとは誰もが思ってはいませんでした。それでも手探りながら何とか当初の課題を達成することは出来たのは、予想外のことがあっても、三度目の正直くらいの感じで前向きに取り組んだからです。当初の見通し通りに行かなくとも、途中で出てきた様々な問題点を反省材料として素直に受け入れ、そのたびに新たな方法、やり方に変えていったからだと思います。

皆が「継続は力なり」「失敗は成功の元」「三度目の正直」という言葉を合言葉にして励ましあって頑張ったからです。最後まで諦めずに辛抱強く取り組んだ成果だと思います。

 

( 平成26123日 )         ©公認会計士 井出事務所

 

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