OJTの限界 と 職場の業務改善

日本の会社の多くは、未だにOJT(On the Job Training)を通して、社員教育をすることが主流になっています。しかしながら、残念なことに多くの場合、その結果は望ましい方向に向いていないように思えます。

担当者によって仕事のやり方が皆マチマチ。そのスキル、レベルが極端にバラツク。段取りを整える習慣、仕事に計画性がない。成行き任せでしか仕事を進められない。仕事が遅い。人によっては、いつまでたっても初歩的なミスが多く、小さな失敗が無くならない。注意不足が目立つという面もあるかもしれません。「本来、出来ていて当たり前の仕事」ができない。仕事が疎かになっているというのがリアルな現実だと思います。

 

の子は蛙」という諺は上司と部下との関係にも当てはまります。OJTに頼った部下育成は、仕事のできる厳しい上司がいる。仕事にシビアなメンバーが揃っている職場であってこそ意味があります。見習うべき手本になる人が回りに多くいることが前提での社員教育のシステムです。

 また、仕事ができるようになるといっても、今いる上司、先輩のレベルの仕事までしかできるようになりません。逆に「朱に交われば赤くなる」という状況も見受けられます。仕事のゆるい上司の下に付くと、却ってルーズな仕事を覚えて、それでも通るような錯覚をしてしまいます。

 鳶は決して鷹を生みません。

 

 どうして、そうなってしまうのか。その理由は、その現実を良く見るとすぐにわかると思います。部下の立場からすると「わからないことがあったら何でも聞いて」と上司や先輩に言われたけれども、実際には誰も何も教えてくれなかった。放っぽらかされていた。仕方がないので、失敗を繰り返しながら、見よう見真似で自分なりに仕事を覚えたと答えるでしょう。

その結果が“我流、マイペース、自分のスタイル”という仕事のやり方です。自分のやり方、自分のペースでしか仕事ができない。それを自立と勘違いしている人もいます。

   結局、OJTの限界は、このあたりにあるように思います。上手く行ったとしても「上司のスキルを見習い、先輩の技を覚える」といった「仕事の手順を一通り覚える」レベルの指導で止まってしまうからです。上司を超えるスキル、先輩を追い越すような技を身につけようとする人は、まずいません。

それ故、上司から「言われたことだけ」しかやらない人。「言われたことしか」出来ない部下になってしまいがちです。それでいて、うちの社員、部下は「やる気がない」と嘆く会社が多いのが実情です。

 

時代の流れと共に、仕事のやり方もドンドン変えていかなければなりません。「部下の指導育成」は見方を変えれば「自部署の業務改善」でもあります。仕事のできる部下を育てることと「職場の問題解決」は、本来表裏一体のもので無ければ意味がありません。メンバー個々の問題と見るか、職場全体の問題と捉えるかの違いであって、その実態は同じであるべきです。

 

社員一人一人を確実な戦力養成するポイントは、その仕事をする際に、特に注意すべきこと。即ち「仕事のチェックポイント」を絞り込み、いつでも、その言葉が直ぐに頭に浮かぶようにすることです。

何故ならば、仕事のできる人は「こういう点に注意すれば上手くいく」といったチェックポイントをシッカリと頭に刻み込んでいるからです。彼等は、いつも、そこに細心の注意を払っています。そこに意識を集中して仕事をしています。だから、それらを忘れることも、そこが漏れたり抜けることもありません。

よく考えて見ると、このような仕事に関わる細かな注意事項を集めたものが「仕事のノウハウ」に他なりません。だからこそ、仕事の重点ポイントを洗い出し、その点への意識を高めることが欠かせないのです。

 忘れてはならない「仕事の注意事項」の内容を全員がマスターし、各人が確実に仕事ができるようにすべきだと思います。

  

 それを部下に身につけさせるには、その言葉をツールにすることが重要です。いつでも見れる文書にする。そうやって、常に「注意力を喚起する」仕組み「意識を高める」仕組みを創る。

 それが、いわゆる「見える化」の狙いです。当社(部署)のメンバーとして、できて当たり前の仕事の技(やり方・ノウハ)」を周知徹底するような「仕事の仕組み」を創るべきです。

それは、部下指導というよりも、むしろ仕事をレベルアップできるようにする職業訓練と呼ぶべきことかもしれません。

 

最も簡単な方法は「改善ポイント」や「注意事項」をスローガンにして壁に貼り出すことです。また、現場のメンバーに、その内容をメモを取らせて、復唱させることも良いでしょう。このような何気ない「仕事の仕組み」が「会社の仕組み」のベースになります。

いずれにしても、会社が社員に求める仕事の基準、その手本になるような具体的な仕事のやり方をハッキリとした形にすることが欠かせません。

 

「何だ、そんな当たり前のことをやっても意味が無い」と思う方が数多くいらっしゃると思います。しかしながら、ただ観念的に「意味が無い」と決め付けて、結局何もしないのでは、そちらの方こそ、意味が無いと思います。

 

( 平成273月3日 )          ©公認会計士 井出事務所 

 

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